髪型の理不尽な校則、あった?「男は坊主」「ポニーテールNG」etc.
「#この髪どうしてダメですか」――ヘアケア製品ブランドのパンテーンが、こんなハッシュタグを合言葉にした広告キャンペーンを展開し、大きな反響を呼んでいる。

 パンテーンが全国の現役中高生400人、卒業生200人、現役中高教師400人に“髪型校則へのホンネ調査”を行ったところ、現役中高生&卒業生は13人に1人の割合で、「生まれつき茶色い地毛を、学校から黒染めするよう促された経験がある」というのだ。3月18日に朝日新聞に掲出された広告には、

「水泳で髪が茶色くなった子も、黒く染めなきゃいけないんですか?」

「茶色く染めちゃダメなのに、黒染めはいいんですか?」

「留学生の金髪はいいのに、どうして私の茶色の地毛は証明書が必要なのですか?」

 ……といった、髪型校則の矛盾を突くようなクエスチョンがずらり。

 ここでは一例として髪の明るさが争点になっているが、ほかには髪の長さや結び方を指定したり、パーマを禁じたりしている学校も多々あるだろう。しかし、そもそも学生にとってどのような髪型がふさわしいのかという明確な答えがない以上、学生の髪型を校則で制限することはナンセンスなのではないか。

 そこで今回は、髪型にまつわる理不尽な校則エピソードを、20~50代の男女に教えていただいた。

◆“地毛証明書”が効果を発揮しなかったケースも

 まずは、6人の男女による学生時代の体験談である。

「私の出身中学では、男子は丸刈りが原則でしたね。高校野球なんかを見ていると最近も丸刈りの学生はいますし、爽やかで似合っていると思いますが、私自身は文化部だったため、全員が全員丸刈りにする意味って何だったのかなぁ、と(苦笑)。特に冬場は、寒くてしんどかったですよ」(53歳男性・メーカー)

「私は子どもの頃から、眉毛が薄いのがコンプレックスでした。高校では化粧が禁止だったので、せめて前髪で眉毛が隠れるようにしていたんですね。そうしたら先生に『長すぎるからピンで留めろ』って言われて、やむを得ずに従ったら、今度は『眉毛、剃ってないか?』って不良だと疑われる始末……」(24歳女性・サービス業)

「2年くらい前、ポニーテール禁止の学校があるってTwitterで話題になっていましたけど、私のところもそうでした。理由は知りませんし、当時は違和感なく受け入れていたのですが、数年後に就活したときはポニーテールが定番の髪型だったので、中高生だからって取り締まるのは『?』じゃないでしょうか」(36歳女性・不動産)

「高校の頭髪検査はとにかく憂鬱でした。例えば、もみあげが耳の穴の高さより長いとアウトで、友達は坊主なのに引っかかっていましたから(笑)。あと、教師のお気に入りっぽい生徒は少しの違反なら見逃されていて、不公平感が半端なかったです」(25歳男性・飲食)

「中学時代、クセの強い天然パーマをクラスの男子にからかわれていたので、夏休みに思い切って縮毛矯正をかけたところ、2学期の初日に先生に呼び出されました……。正直に理由を話したら『でも、一応そういうのは禁止だから』という返事。私はそれ以上お咎めナシだったからいいものの、髪型のせいでいじめられているような子の場合、もっと融通が利けばいいのにと思います」(41歳女性・商社)

「染髪禁止の高校だったので、生まれつき髪が明るい僕は、入学時に“地毛証明書”を提出したんですよ。それなのに情報が充分に共有されていないのか、廊下ですれ違った先生に『染めてるの?』と肩をつかまれたことがあって、かなりムカつきましたね。こんな面倒事は二度とごめんなので、就活では染髪禁止の企業を徹底的に避けました」(30歳男性・IT)

 地毛証明書に関しては2017年、教育評論家の尾木直樹氏が『週刊文春』にて苦言を呈しており、「『疑われないために出しておいたほうがいい』という意見もあるけど、そんな“管理される方が安心”という感覚を子どもたちに持たせるなんて情けない」とのこと。地毛証明書は学生を守るためのものなのか、もしくは縛るためのものなのか、まだまだ議論の余地がありそうだ。

◆実は教師の側も、髪型校則の妥当性を理解できていない?

 一方、現役の高校教師の男性からも、次のようなコメントが寄せられた。

「自分が教えている高校ではツーブロック不可です。髪がスッキリして快適なので、自分もツーブロックにしたいくらいなんですけど、生徒に禁止している手前、一緒にガマンするしかないという(笑)。『ツーブロックは学生らしい髪型ではない』というのが理由なのですが、果たして学生らしさとは何なのか、教師の立場でも正直わかりません」(29歳男性・教師)

 冒頭で取り上げたパンテーンの調査によれば、70%の中高教師は「勤務している学校の髪型校則に疑問を感じている」と回答。さらに87%の中高教師は「時代に合わせて、髪型校則も変わっていくべきだと思う」とも回答しており、この現状を「おかしい」と認識しているのは、決して学生だけではないのだろう。

 これについてパンテーンは、「学生・先生ともに髪型校則に対して疑問や課題を持ちつつも、双方で対話をする場がない」と推察している。今回のキャンペーンが問題提起となって、世の中はどう変わっていくのか。<取材・文/A4studio>