騒ぎの発端をつくった1人の久保田
 地元にも見放された――。お笑いコンビ「とろサーモン」の久保田かずのぶ(39)と「スーパーマラドーナ」の武智正剛(40)が、「M-1グランプリ2018」で審査員、上沼恵美子(63)に“暴言”を吐いた問題はいまだ収まる気配を見せない。それどころか、とろサーモンには、より強い逆風が吹いた。2人の地元・宮崎県の選挙管理委員会は13日までに、県知事選(23日投開票)の選挙公報や新聞広告に掲載する予定だったとろサーモンの写真を差し替えたのだ。地元にすら嫌われたとろサーモンは、昨年のM-1優勝すらなかったことにされかねないという。
 宮崎県選管は若者の投票率向上を目指し、若年層から人気のあるとろサーモンを投票啓発のキャラクターに採用していた。
 だが、選管によると告示日の6日から、投票を呼びかけるとろサーモンが出演するテレビCMが流れると「ふさわしくない」といった苦情が県に相次いで寄せられた。担当者は、差し替えの理由を「選挙への悪影響を考慮した」と語り、対応に大わらわの様子だ。
 選管は随時配布する選挙公報と、16日に掲載予定の新聞広告について、2人の写真を宮崎市にある県庁本館の写真に差し替えた。投開票日の前日に出す新聞広告も、写真の差し替えを検討。それだけではなく、宮崎市内にある物産館には、2人をモデルにした銅像を置いていたが、騒動を受けて13日に撤去した。
 とろサーモンは久保田、村田秀亮(39)の2人とも宮崎県出身。投票啓発のキャラクターに採用されたり銅像が建てられたりしたのは言うまでもなく昨年のM-1で優勝したおかげ。1年前は“宮崎の英雄”ともてはやされたが、暴言騒動で県に苦情が寄せられるほど、扱いが180度変わってしまった格好だ。
 ただ、苦情が寄せられているのは、宮崎だけではない。
「テレビ局にも『久保田と武智は使うな!!』などという苦情が殺到している。特に上沼さんの地元大阪のテレビ局には、苦情がたくさん来ている」(テレビ局関係者)
 テレビやイベントなど芸能関係の仕事だけではなく、選挙のキャラクターの仕事にも影響が出たことは、深刻さを物語っている。こんな状況では、とろサーモンとスーパーマラドーナに新しい仕事のオファーが寄せられることはほとんどありえない状況だ。
 それどころか「とろサーモンは『M-1優勝ということすらなかったことにされかねない』と言われている」とはお笑い関係者だ。
「もちろん優勝を剥奪されることはないでしょうが、来年以降、過去の優勝者のVTRが流される時なんかに、とろサーモンだけ外されたりする可能性はある。それくらい、いま風当たりは強いから」
 実際にそういったケースはないわけではない。
「M-1」「R-1ぐらんぷり」と並び“3大賞レース”といわれる「キングオブコント」では、過去の優勝者で1組だけ、優勝時のVTRが流されないコンビがいる。それは2010年に優勝したキングオブコメディだ。
「キングオブコメディが解散したのは、15年にメンバーの高橋健一が女子高生の制服を盗んだ窃盗容疑で逮捕されたのが原因。久保田は暴言を吐いた動画がネットに流れたが逮捕されたわけではない。それなのに『テレビで使うな!』などという苦情が殺到しているので…」(同)
 高橋の逮捕が原因で解散したキングオブコメディと、とろサーモンを同列に並べるのは、さすがに気の毒な気もするが、それほど強い逆風にさらされていることも間違いない。
【4月銅像披露】とろサーモンの2人は宮崎県のPRやイメージアップに協力する「みやざき大使」に委嘱されている。昨年M-1制覇を果たすと、村田が賞金1000万円の使い道に関連して「宮崎に銅像を建てたい」と発言。これが現実になり今年4月、東京・新宿の宮崎県アンテナショップで「ひなたの縁側像」がお披露目された。ベンチで2人がくつろぐ姿で、「日本のひなた宮崎県」をイメージして制作された。
 縁側像は10月、宮崎県に里帰り。みやざき物産館KONNEに設置され、県では出張先を募って商業施設などで公開されていた。M-1がきっかけで誕生した銅像が、M-1にまつわる騒ぎで撤去されてしまった。
【選挙と芸能人】選挙啓発にタレントら著名人が起用されることは少なくない。2016年に選挙権年齢の下限が18歳に引き下げられたことから、若年層への対策としても目を向けられている。
 東京都生活文化局が10月に発表した「選挙に関する啓発事業」アンケート結果によると、啓発事業へのタレントや著名人起用に「賛成」が24.7%、「どちらかといえば賛成」が40.0%。「反対」は10.9%、「どちらかといえば反対」が9.8%だった。賛成の理由は「マスメディアやSNSに取り上げられることで広く周知できる」が最も多かった。
 別の首都圏自治体の啓発事業に関する検討では「芸能人は使うべきではない」という意見も出ている。