偏見を抱いてしまいがちな職業…というものがあると思います。

そのひとつがAV業界。人前で裸になるという仕事に、どうしても偏見の眼差しを向けてしまう人もいるのではないでしょうか。

そんな業界でトップAV女優として走りつづけている紗倉まなさん。18歳からAV業界に入り、“えろ屋”を自称する彼女は、明るくてかわいい存在として大人気。

今回は偏見や世間の批判に負けない、紗倉さん流の戦い方についてお話を伺いました。

〈聞き手:ライター・田中紗也加〉


【紗倉まな(さくら・まな)】高等専門学校の土木科出身。2011年にイメージビデオデビュー、翌年2月にAVデビューし、SOD大賞2012では最優秀女優賞、優秀女優賞、最優秀セル作品賞、最優秀ノンパッケージ作品賞など6冠を達成する。著書『最低。』は実写映画化もされ、多彩な活動を見せている

「偏見はほとんどなかった」AV業界に入って知った“普通じゃない”私

田中:
(写真で見るよりもさらにかわいい…!)

まずは紗倉さんがAV業界に入った動機から伺いたいのですが、この業界に入るとき、世間から偏見を持たれるとか、批判の対象になるかもしれないという心配はなかったんですか?
紗倉さん:
いや、実は私…AV業界にマイナスなイメージがまったくなかったんですよ
田中:
え、そうなんですか?
紗倉さん:
性欲は人間の3大欲求に含まれているものですし、その欲求の1つを具現化したAV業界を日陰的な存在だとは思っていなかったんです。

それに私、家の中では基本的に裸族だったので「たかが裸じゃん」という感じで。
田中:
家の中では裸族な人はいると思いますが、なかなかそういう感覚にはならない気が…

ちなみに、過去にAVを見る機会はあったのでしょうか?
紗倉さん:
はい。中学生のときに父の書斎でたまたま…(笑)。

でもそのときも嫌悪感を抱くことはなく、むしろ「女優さんってキレイだなあ」って感動してました。

その体験がきっかけで、AV女優という職業はなんとなく将来の選択肢のひとつに含まれたんです。
田中:
それでAVの世界に入ったんですね。
紗倉さん:
はい。業界のことをまったく知らなかったせいで、入ってから「こんなに偏見がある業界だったのか…」って驚きましたね。

「私は普通じゃなかったのか!」

初めは応援してくれる声ばかりだったが、違う仕事に挑戦したら叩かれた

田中:
業界に入ってからネガティブなことを言われたり、嫌な思いをしたりすることはありましたか?
紗倉さん:
AV業界って、入った瞬間は叩かれないんですよ

1年目の女優さんに対しては「頑張って!」と応援してくれる“賛成派殿方”ばかりだったので、悩むことはほとんどありませんでした。

でも、3年くらい経ってから、途端に叩かれるようになりましたね。
田中:
何があったんですか?
紗倉さん:
AV女優だけではなく、違う仕事を始めたんです。

それまで、メディアに出るときはアダルトグッズの紹介や、水着になってエロいことを言う、みたいな仕事が多かったんですよ。

でも、3年くらい経ってテレビなどで自分の意見を発言するようになると、途端に叩かれるようになりました。

専門分野のことだけをやっていれば叩かれることも少ないですが、違うことを始めると一気に周囲の反応が変わります

二足のわらじを履くこと」を始めた瞬間に集中砲火が始まりましたね。
田中:
なるほど…特に辛かったエピソードはありますか?
紗倉さん:
めちゃくちゃありますね~。たまにショックすぎて忘れるくらい(笑)。

以前、テレビで真剣に自分の意見を言ったときに「文化人ぶりやがって。クソ気にくわない。黙って脱いでろよ」とTwitterで言われたことがあって。
田中:
ひどいですね…
紗倉さん:
それに対して「黙ってヌいてろ」と返したらめちゃくちゃ炎上しました(笑)。

こういうことをサラッと言えてしまうハート…強すぎません?
田中:
かっこいい…
紗倉さん:
最近、言われることはだいたいパターン化されているとわかってきたので、だんだんと慣れてきました。

ネットの批判には「大喜利」で勝つ。紗倉まなの“批判の扱い方”

田中:
先ほどの話でも思ったのですが、紗倉さんってネガティブなことを言われたら、バシッと言い返しますよね。

偏見に負けない自分なりの戦い方などがあるんですか?
紗倉さん:
私、大喜利をよくするんですよね。


田中:
大喜利?
紗倉さん:
相手に吐かれた暴言を感情的に返すのではなく、「一枚上手だね」と言われるような回答にしたいんです。

だから、言葉の勝負だと思って戦ってますね。
田中:
言葉の勝負…作家でもある紗倉さん、めっちゃ強そうですね(笑)。
紗倉さん:
ネットだと、「まなちゃんはどう返すの?」って見られている気がするんですよ。やり取りもふくめて、人間性を確かめられているような心地悪さもありますけど。

辻斬り勝負!」と思っていると、やりとり自体も楽しめるようになってきますし、ネガティブな発言もあまり気にならなくなってくるんです。
田中:
すごくポジティブですね! このスタンスって最初から持ってたのでしょうか?
紗倉さん:
いえ、最初はもちろん人間不信にもなりました。でも最近は、ネガティブな人の意見を“周波数”で分けられるようになりましたね。

批判にも「公害レベル」の周波数「雑音レベル」の周波数があると思っていて。それらをどう捉えるのかというチューニングを、自分のなかの機能として搭載しようと思ったんです。

そしたらかなり楽になりました。
田中:
ちょっとなかなかたどり着けなさそうな境地ですね…なんとなくしかわかりません(笑)。
紗倉さん:
あとは、私も昔2ちゃんねるで深く考えずに書き込みをしていた時期があったので、「みんなもそうなのかな?」と思う部分もあって。

人間って多面的なので、ネットに書き込んでいるときと普段の性格は違うこともありますよね

そう考えるようになってから、深く考え込むことは少なくなりましたね。

「偏見の壁の厚さは変わらないけど、掘りやすくはなった」

田中:
そういえば、紗倉さんの小説『最低。』を読みました。文庫版のあとがきのなかで『偏見という鉄製の壁をアイスピックでほじっていく』という表現されていましたよね。

著書を出されたのが2017年9月。今はその偏見の壁は薄くなっていると感じますか?
紗倉さん:
壁の分厚さはあまり変わらないけれど、「硬さ」が変わったかなと思います。

AV業界に興味を持ってもらいやすくなって、昔に比べて壁が掘りやすくなったなあと。


田中:
なるほど、「硬さ」ですか。また絶妙な表現…!

「壁が掘りやすくなった」というところ、もう少し詳しく聞いてもいいですか?
紗倉さん:
持つ“工具”によって、掘り具合が変わってくると思うんですよね

今って、みんな「どの工具で掘るか」ということに迷っている段階だと思います。
田中:
工具…どういう意味でしょう?
紗倉さん:
これまでの活動で、AV女優としてだけで頑張っても、掘れるのはアイスピックレベルだと実感したんです。

しかし、違う仕事からアプローチすることで、それが大きく掘れる電動ドリルになるというか。


紗倉さん:
たとえば、小説やコラムという入り口から私の存在を知ってくださった人は、私の職業を差別する方向には行きにくいんです。
田中:
なるほど、それが「工具を変える」ということなんですね。
紗倉さん:
正直、正面突破しているわけではないので「これでいいんだっけ?」という思いもありますけど。

自分の応援部隊をつくること。そして「続けていくこと」が重要



紗倉さん:
あと最近は、偏見の壁を薄くするには人気よりも支持を得て、自分の応援部隊をつくることが必要なんだなと感じます。
田中:
応援部隊、ですか。
紗倉さん:
今さらですが、この職業をやっている本人が「偏見と戦っているんだ!」と言いつづけるのは、イタく思われがちですよね(笑)。

それよりも、私の代わりの人たちに戦ってもらうことが大切なんじゃないかなあと。
田中:
なるほど。その応援部隊は、どうやったら増えるんですか?
紗倉さん:
それも同じで、AV女優だけではなく、ほかのアプローチも積極的にやったほうがいいのではないかなと思っています。

それこそ「AV女優」ではない違う入り口から入った人のほうが私の支持者になってくれたり、自分の意見を強く言ってくれたりするんです。

出会った第一印象ってすごく大切なんだなあと感じますね。


紗倉さん:
そして、やっぱり「AV女優を長く続けていくこと」も大事なのかなと思います。
田中:
なぜそう思うんですか?
紗倉さん:
自分の発言力を強めるには、年月が必要だと思うんです。ある意味“匠”にならなきゃいけないというか。

長く続けて、その過程でいろんな起伏を乗り越える。

その年月が増せば増すほどネガティブな意見も見慣れてどうとも思わなくなるし、結果、自分の意見も言いやすくなるんじゃないかなと。

「批判がすべてなくなってほしい」とは言いづらい。ただ、意思なき批判はカッコ悪い

田中:
紗倉さん自身、これからのAV業界はどんな風になってほしいとお考えですか?
紗倉さん:
うーん…やっぱり「批判をなくしたい」というのは本音としてありますね。

でも一方で、批判が消費を生むとも思っているので、すべての批判がなくなってほしいとも思っていないんです。
田中:
批判が消費を生む?
紗倉さん:
はい。人って、批判されるものに興味を持つじゃないですか。

だから批判がなくなると、そう言った意味での購買意欲も減ると思っているので…

本心と自分の役割は違うので、答えを出すのが難しいですね。


田中:
たしかに本業でされている人にとっては、偏見や批判がすべてなくなるのはマイナスに感じるかもしれませんね。
紗倉さん:
ただ、近年「性を自粛せよ」という風潮が強くなっていますが、「なぜ自粛するべきか」ということについてはもっと勉強してほしいですね。
田中:
自粛の理由、ですか…
紗倉さん:
性の表現というのは、いろんな文化の継承があって変化しています。それがだんだん規制されて、自粛されるようになったのはなぜなのか。

その理由を知らずに、「みんなが言っているから」という同調圧力だけで性的なものを批判しないでほしいなと思います。私が言うのもおこがましいですが。

そこはもっと自分の意見を持ってほしいです。


第一印象はふんわりとして、かわいい紗倉まなさんでしたが、「続ける意地」が垣間見えた瞬間、トップAV女優として走ってきた彼女の強さを感じました。

自分の支持者を集める違う角度からアプローチをする、そして愚直に続けること。偏見や世間の目が窮屈だと感じている方のヒントになれば幸いです。

〈取材・文=田中紗也香(@natvco)/取材協力=渡辺将基(@mw19830720)/撮影・編集=福田啄也(@fkd1111)〉
紗倉まな(@sakuramanaTeee)さん | Twitter
https://twitter.com/sakuramanateee
暫し えろ屋。 by 紗倉まな/ Voicy - 今日を彩るボイスメディア
https://voicy.jp/channel/733
働くおっぱい | ダ・ヴィンチニュース
https://ddnavi.com/serial/hatarakuoppai/
18歳でアダルトビデオ業界に居場所を見つけた紗倉さんが、一人の働く女性として見たこと、聞いたことをつづるコラム集

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