フジ・メディア・ホールディングス(フジHD)の株主総会が6月25日、東京・港区台場のホテルグランパシフィック LE DAIBAで行われた。
フジHDは業績不振から抜け出せずにいる。2015年3月期の売上高は前期比0.2%増の6433億円と横ばい。本業の儲けを示す営業利益は18.7%減の256億円と2期連続の減益だ。主力の放送事業は視聴率が低迷したため、営業利益は26.6%減の133億円と大幅な減益となった。
気を吐いたのは都市開発事業で、売上高は31.6%増の571億円、営業利益は37.2%増の73億円を上げた。同事業の増収が寄与し、フジHDの売り上げは横ばいを保ったが、営業減益は放送事業、映像音楽事業、生活情報事業の不振がストレートに響いた。
特に本業である放送事業の不振は影響が大きい。フジHD傘下のフジテレビは視聴率が低迷し、在京民放キー局5社の中で1社だけ、地上波テレビ広告収入の減少が続いている。
●経営体制への批判
今年の総会では業績だけでなく、トップ人事も大きな注目を浴びた。太田英昭社長が退任して関連会社の産経新聞社会長に就き、嘉納修治副社長が社長に昇格。経営責任を取っての退任であれば潔いものだが、日枝久会長は続投する。
そのため、「太田社長1人に責任を負わせた日枝会長の傲慢人事」(新聞記者)との見方も強いが、この点について株主から質問されると会社側は「フジテレビと産経新聞社の連携強化のため」と答えた。しかし、太田氏はフジHDの取締役からも離れるため、果たして連携強化といえるのか。フジHD経営陣のほとんどは子会社や関連会社の役職を兼務しており、産経新聞社に関していえば日枝氏は取締役相談役を、嘉納氏は監査役を務めている。
議案は、取締役16名選任などを含む第1号議案から第5号議案が会社提案、第6号議案から第14号議案が株主提案。株主提案には昨年同様、取締役の在任期間制限が盛り込まれた。提案株主はこう話す。
「役員の在任期間の長期化と高齢化による弊害が指摘されています。日枝氏は、1983年に取締役に就任して以来その座に32年間も就いており、代表取締役には88年の社長就任以来27年間も在職しています。時代の変化に即応できる経営体制を構築すべきです」
●株主が“やらせ”の可能性を指摘
そして、今年は総会の議事運営にも大きな注目が集まった。ある株主が、総会内で次のように発言したのだ。
「昨年の質疑では、質問に立った16人のうち9人が社員株主などの“やらせ”だったという総務局作成のメモがある」
この質問に対しフジHD側は沈黙を守ったまま、回答を行わなかった。
今年、質問に立ったのは18人。会社側の意を組んだものと受け止められる質問もいくつかあった。例えば、質疑2人目の男性は「個人的には台場にカジノが欲しい」と言い、フジHDのカジノ誘致推進にエールを送った。9人目の男性は、「午前の視聴率は好調だと聞くが、その要因は」と質問し、11人目の男性は「動画配信などのインターネット事業の戦略は」と聞いた。いずれも、会社側に淡々と事業説明させるものだった。
このほかには、「小学2年生のウチの子どもは、テレビに字幕が多くて見るのを面倒くさがる」というものや、「韓流寄り」との批判、「保守メディアとしてがんばってほしい」とのエールを送る株主もいて、全体としてはバラエティに富んだ質問が出たともいえる。ちなみに、会社側は「保守メディアだとは思っていない」と回答した。
そして総会開始から3時間ほどが過ぎたところで、男性株主が質疑打ち切りと採決の動議を出し、これが拍手で認められ総会は終了した。
大ごとになるか?
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