無届けで居住、勝手に転貸…無法地帯の公営住宅、市は実態調べず 奈良
奈良県大和高田市が1970~80年代を中心に整備し、公費で修繕・管理している「改良住宅」(計467戸)の1割以上で、入居資格のある住民が死亡した後も別の人が無届けで居住していることが明らかになった。市はこれまでも半ば状況を把握していたが、家賃払込通知書などが宛先不明で返送されてきても職員が直接家まで届けるだけで、積極的に実態解明をしてこなかった。市は現在も「詳しく調べる予定はない」と説明している。【稲生陽】
改良住宅は住宅地区改良法に基づき、行政主導の住宅移転などに応じた元住民に対して市町村が低額の家賃で提供する公営住宅。同市では73~99年度に同和対策事業として建設が進められ、住宅数は県内の市町村では4番目に多い。一般的に広さは2階建て延べ約70平方メートル前後で、月額家賃は1万円弱。大規模な修繕は市が費用を負担する必要があり、ここ5年では計約6000万円かかっている。
入居資格について、同法は国が指定した改良地区の元住民と一定期間同居していた家族に限って認めているが、現在の同市内の入居者392世帯のうち、住民基本台帳では55世帯は名義人が既に死亡していた。
本人が健在でも、禁止されている第三者への転貸が行われているケースもあるとみられ、2012年には市職員夫婦が親族名義の改良住宅を転貸して10年以上も利益を得ていたことが発覚した。
さらに複数の住民によると、住民が勝手に「居住権」を売却する例も数十年前からあったという。毎日新聞が入手した1988年2月2日付の手書きの「契約書」によると、87年の入居直後に死亡した男性の元住民の親族が、第三者である市外の男性に居住権を200万円で売却していた。
この住宅に約25年前から最近まで住んでいた別の男性(53)は「この契約で居住権を買い取ったのは、自分の元妻の当時の交際相手。自分は元妻に150万円を支払って居住権を買い取った」と説明し、「市は家賃の通知書もずっと名義人宛てに送ってきており、これまで市にも再三事実を説明した」と証言した。
市営繕住宅課は昨秋に毎日新聞の取材を受けるまで貸借人が健在かどうかなどを住民基本台帳などで確認したことがなかったと説明しており、「表札が違ったり郵便物が届かなかったりしても、家賃さえ支払われていれば名義人が生きていると見なしてきた」と釈明。「なぜ長年調べなかったのかは分からない。今回も面接での調査などはしていないが、将来的にはそれも検討したい」としている。
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