左から西井万理那、藍染カレン、兎凪さやか、香椎かてぃ 撮影/河野優太
シンガーソングライターの大森靖子を中心に、様々な過去を持った個性豊かなメンバーで構成されたアイドルグループ・ZOC。大森が手掛けるメロディアスかつハートを貫く楽曲に、彼女たちのカラフルなビジュアルと異端的な雰囲気が合わさり、今若い世代を中心に支持を受けている。そんな彼女たちの始まりとは。

 9月9日にZepp Tokyoで開催された初ワンマンライブは満員御礼。レーザービームを多用したカラフルな演出もさることながら、広いステージを活用したアクロバティックなダンス。大森靖子、藍染カレンを中心に据えた鬼気迫るボーカル。メンバーのキャラクターに寄り添って大森が作ったソロ曲の披露と盛りだくさんの内容で、集まった観客を熱狂させた。アイドルグループの概念をぶち壊すようなエネルギッシュなパフォーマンスは、ワンアンドオンリーと呼ぶに相応しい。

 そもそもZOCは誕生から異色のアイドルグループである。アイドル好きとしても知られるシンガーソングライターの大森が自ら声をかけて集めた5人のメンバーは、夢半ばで道を断たれたアイドル、少年院帰り、ホームレス経験のあるヤンキー、引きこもり、コンプレックスだらけの現役女子大生と、際立った個性を持つ者ばかり。

 ユニット名の由来となるのは、「支配領域」という意味を持つゲーム用語「Zone of Control」。ZOCの提唱するテーマは「孤独を孤立させない」である。ともすれば一般社会から弾かれてしまうようなメンバーたちが集まり、その個性を尊重しながらも、共生する場所となっている。大森はプロデューサー的な立場ながらも、あくまでメンバーと同じ立ち位置で、自らを“共犯者”と名乗る。

 唯一無二のメンバーに共感するファンは日増しに増えている。自由奔放に快進撃を続けるZOCにぜひ注目してほしい。
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──まずはわずか結成1周年で成功した初ワンマンライブを振り返っていきたいのですが、本番前はどんな雰囲気だったんですか?



西井 私が一番うるさかったよね? 「わー!」って叫んでた。

藍染 うん。珍しくにっちゃん(西井)が緊張して。いつもは一歩引いて、みんなを見守っているんですけどね。

西井 普段のライブは「ノリで行けるっしょ」って感じなんですけど、“ワンマンって緊張するもの”だって自分の中のイメージがあったせいか、誰よりも緊張しました。

藍染 私は何に緊張していいのかも分からないぐらいの状態でしたからね。

──アンコールでは、兎凪さやかさんが号泣してたのが印象的でした。



兎凪 自分に自信がなくて、ステージに立つこと自体が怖いなって思った時期があったんです。でもワンマンの終盤で「ライブ超楽しかった」って感情になって。友達、家族、運営さん、メンバー、来てくれたみんなと、ZOCを応援してくれる人たちのおかげでワンマンができて、なんて私は幸せなんだと思ったら、自然と涙が出てきました。

──いつも笑っている印象の西井さんも泣いていたので驚きました。



西井 普段あんまり泣かないけど、リハぐらいから泣きそうになっていて。(大森)靖子ちゃんに「ヤバい! 今日は泣いちゃうかも」って言ったら、「別に泣いちゃっていいよ」って。以前やっていたユニット「生ハムと焼うどん」の活動を休止したときは、またワンマンができるなんて思ってなかったし、やっとあのときの続きの景色が見られたって気持ちになったんです。こんなに豪華なワンマンライブも初めてだったからうれしかったです。

──今日は仕事の都合でお休みの戦慄かなのさんも泣いていましたけど、藍染さんと香椎さんは一切涙を見せなかったのが対照的でした。



藍染 私は最後の最後まで実感が湧かなかったというか。にっちゃんと靖子ちゃん以外はワンマンライブの経験がなかったですからね。でも実は現場入りして、リハでレーザービームなんかを初めて見て、大きなステージで素敵な演出をしてくださっていると思って1人で泣いてました(笑)。そこで泣き納めしたから、本番は大丈夫だったのかも。

西井 (藍染)カレンちゃんは本番前、スタッフさんにお礼を言いに行ったんだよね。

藍染 そうなんです。たくさんの人たちが私たちのために動いてくれたので、いろいろ込み上げてくるものがあってお礼を言いに行きました。

西井 (香椎)かてぃちゃんはワンマンが終わった後に、めっちゃ泣いてたよね。

藍染 なんなら一番泣いてた(笑)。

香椎 ライブ中は泣かないように意識してたからね。

──女性客が多かったのも印象的でした。



藍染 半分以上が女性でしたよね。ありがたいことにZOCを初めて見るって方も大勢いました。

西井 かてぃを始めメンバーのSNSが、女の子たちの目に止まることが多いからね。

藍染 そもそもアイドルの現場に、あんまり来たことのない子たちがZOCを好きになってくれているから、ワンマンは来やすかったのかもしれないですね。

──ZOCは大森さん以外の5人でやるライブも多いですけど、やっぱり大森さんがいると存在感は違いますか?



西井 全然違います。すごく締まるし、安心感しかない。

藍染 やっぱり靖子ちゃんはパワーがすごいから、一緒に戦ってくれてるなって感じますね。5人でやるときも、いかにパワーを落とさないようにライブをするかが、この1年間に考えてきたことで、それをワンマンでも出せたのかなと思います。

──ZOC結成についてお聞きしたいんですが、それぞれどうやって加入することになったんですか?



西井 「生ハムと焼うどん」がゴタゴタしていたときに靖子ちゃんが仲介役みたいな感じで入ってくれたんです。それでグループを続けるか辞めるか最後の話し合いをしていたら、結局もうムリって結論になって。めっちゃ私が泣いてたら、靖子ちゃんが「実はアイドルグループを作ろうと思ってて、一緒に頑張ろうよ」みたいなことを言ってくれたんです。それから2年ぐらい経ったときに、ZOCのLINEグループに招待されて今に至ります(笑)。口約束だったから本当にやるのか分からなかったけど、ずっと待ってました。

兎凪 私は「ミスiD」(講談社が主宰する女性アイドルオーディション)に出たときに、実行委員長の小林(司)さんから「アイドルやらない?」って声をかけられたんです。選考委員には、靖子ちゃんもいたので誘われたと思うんですけど、最初はメンバーじゃなくスタッフとして考えていたらしいんです(笑)。やるならメンバーになりたいって靖子ちゃんにお願いしました。実際にZOCの活動が始まるまで時間がかかったんですけど、靖子ちゃんの作るアイドルグループに絶対入りたいって思ったので、他のアイドルグループに気持ちが揺らぐことはなかったです。

藍染 私もミスiD出身なんですけど、最終審査のときに踊ったんですよ。もともとハロー!プロジェクトさんが大好きで、よく家で踊っていたので、それを披露したら、靖子さんがいいねって思ってくれたらしくて、「一緒にアイドルをやりませんか」って声をかけていただきました。

香椎 私もミスiDをきっかけに靖子さんと知り合ったんですけど、にっちゃんと同時期ぐらいに「アイドルグループを作るから待ってて」と言われて。ずっとアパレルでバイトをしていたんですけど、やっと去年声をかけていただいて、ZOCのメンバーに決まりました。

──この個性的すぎるメンバー構成を見てどう思いましたか?



兎凪 正直、やっていけるのかなって思いました。めっちゃ怖かったです(笑)。ただやっていくうちにメンバー全員、ハートフルなのが分かってきて大好きになりました。今考えると、他のメンバーだったらやっていけなかっただろうなと思います。今は個々で会ったり、遊んだりすることも多くなって、メンバー間で意見も言えるようになったから、より団結力が増してきたと思います。

──ZOC結成時からの「孤独を孤立させない」というコンセプトは聞かされていたんですか?



兎凪 実は、最初のZOCのコンセプトは、シェアハウスに住んでMVとかも自分たちで作る創作系アイドルみたいな、しかも可愛い系みたいな案だったんです。それを聞いていたので、「あれ? 全然違うな」って(笑)。

藍染 絶対にシェハウスは無理!

香椎 今の状態でも厳しいよね(笑)。

兎凪 しかもZOCのLINEグループができたとき、グループのアイコンがレディー・ガガだったから、「私が入って大丈夫?」って思いました。

西井 あれは私が設定したの。当時、一番気に入ってた画像で、グループの方向性とは全く関係なかった(笑)。

藍染 あるときに、「孤独を孤立させない」ってテーマが発表されたんですけど、それまで何も知らなかったです。

──結成当時はライブ活動も活発じゃなかったですよね?



兎凪 最初は月に多くて4、5回ライブがある程度でした。

西井 新しいアイドルグループにしては少ない方だよね。最近になって、ちょっとずつ本数は増えたけど、 次のライブが3週間後みたいなこともあったし。

藍染 ライブ本数が少ない分、毎回を大事にしようと思ってました。

兎凪 個々のお仕事があったり、私だったら大学があったりで、なかなかスケジュールを合わせるのも大変だったんですけど、徐々に集まれるようになりました。

──レッスンはどうやって行われるんですか?



藍染 rikoちゃんってダンスの先生がいて、ZOCの振付を全て担当してもらっていて、その人に見てもらってます。

──アイドルとしては、かなり激しい振付ですよね。



香椎 ただ基本的にうちら、ダンスの基礎がないんですよ(笑)。

兎凪 私なんてダンス経験もなければ、リズム感もないですからね。

西井 でも初心者が多いわりには、めっちゃ踊れてると思う。

藍染 rikoちゃんが、しっかりポイントを教えてくれて、あとは各自で練習するって感じだよね。

兎凪 ポイントはLINEでも送ってくれるし、抜け駆けになるかもなんですけど、私がダンスで悩んでいたときにrikoちゃんに相談したらマンツーマンで教えてくれました。優しく相談に乗ってくれるし、いないと困る“共犯者”の1人です。

──歌のパート割は大森さんが決めるんですか?



藍染 そうです。最初からパート割が決まった状態で渡されます。靖子ちゃんが歌詞に合う人を選んでくれているので、そこからパート割を変更することも、ほとんどないです。

──新曲の衣装のスタイリングは香椎さんが担当したそうですね。



香椎 もともとやる予定だった人の都合がつかなくなって、急遽、靖子さんから「かてぃ、いけるっしょ。明日、一緒に原宿に買いに行くよ」って言われたんです。

藍染 急だな(笑)。

──急な呼び出しにも関わらず、これだけメンバーのキャラクターに合わせたコーディネートができてるのはすごいですよね。



西井 それぞれ偏っているけど統一感がありますからね。

香椎 『ドラゴンボール』の天下一武道会をイメージして揃えたんです。探すのが大変だったから、二度とやりたくないけど(笑)。ただデザインなんかを考えるのは好きで、いずれはドラゴンボールで悟空が着てるオレンジ色の道着みたいな衣装をお揃いで着たい。

兎凪 私たちは天下一武道会が何なのか、いまだに分かってないんですけどね(笑)。

▽藍染カレン(あいぞめ・かれん)


ハロー!プロジェクトをこよなく愛し、引きこもり時代に歌とダンスを磨き上げた歌姫。「めっちゃSNSで自撮りをキメていて、絶対にムリと思ったけど接してみるといい奴。意外と気が強い」(香椎)「ZOCを引っ張ってくれる綺麗で頼れるお姉さん」(兎凪)

▽香椎かてぃ(かしい・かてぃ)


ホームレス経験もある横須賀のヤンキーでアーティスティックな才能に恵まれている。「ミスiD2017」大森靖子賞受賞。「カリスマ性があって、今の時代に沿ったアプローチができている」(藍染)「落ち込んでいるときに、いち早く気付いてくれる」(兎凪)

▽西井万理那(にしい・まりな)


高校生時代に結成した伝説のアイドルユニット「生ハムと焼うどん」でアイドル界に新風を巻き起こした。圧倒的なコミュ力と緩急自在なトーク力の持ち主。「フラットにみんなのことを見てくれていて何でも話せる」(兎凪)「素で面白い子です」(藍染)

▽兎凪さやか(うなぎ・さやか)


恵まれた容姿を持つにも関わらず幾つものコンプレックスを抱える現役女子大生。自撮りの上手さに定評がある。「気配りのできる子で、気を遣わずにいられる」(西井)「会ったときよりも、ずっと可愛くなってる。理想の自分になるために努力している」(藍染)


2ndシングル『断捨離彼氏/A INNOCENCE』


10月9日(水)発売
EDMに乗せて「面倒な男は断捨離して、生きやすい世界を自分で作っていこう」という力強い歌詞が突き刺さる、戦慄かなのがセンターを務める。