2015年3月10日火曜日

陵辱シーンで見せた永作博美の凄み、 円 熟味を増すその魅力とは

すっかり演技派の実力派女優として評価も定着し た永作博美だが、先月には人気漫画を錚々(そう そう)たる役者陣の共演で舞台化した『プルー トゥ PRUTO』に出演。ひとり二役でアトム の妹・ウランまで見事演じ切り存在感を示した。
2月28日からは主演映画『さいはてにて〜やさ しい香りと待ちながら〜』も公開中で、これまた 難役に挑戦し観客を驚かせるとともに評価をさら に高めている。
彼女が演じるのは、幼い頃に両親の離婚で父親と 生き別れた岬。漁師をしていた父が8年前に遭難 事故で生死もわからず行方不明になっていたこと を知った彼女は、残された故郷・奥能登の朽ちた 舟小屋で暮らし、父を待つことを決意する。
東京では珈琲店を自営し、男っ気もなくひとり孤 高に生活していた岬だが、その荒(あば)ら屋を 改装すると人気のない海辺で店を再開。だが閑散 として廃れた土地でそばにあるのは正面に立つ、 これまたうらびれた休業状態の民宿のみ。
そこには幼い姉弟と若いシングルマザー・絵里子 (佐々木希)が暮らしており、絵里子は時折訪れ てくるヒモのような男(永瀬正敏)に心を許して いた。岬は子供たちと交流を持つようになるが、 疎(うと)ましい存在として絵里子は心を開か ず、子供らも近づけさせない…。
失われた家族の物語であり、そこから親子の絆 と、女ふたりの真逆でありながら繋がっていく再 生を描く物語。淡々と感情を押し殺した中に力強 さと優しさをたたえた演技でひと際、円熟味を感 じさせるのが永作だ。
プロデューサーの渡辺和昌氏は「その強い女性の 中にも弱さがあり、微妙な心の揺れがある。これ を演じきれるのは永作さんしかいないと思った」 と語る。永作自身は「岬の中にある脆(もろ)さ をどのように感じさせればいいのか。佇(たた ず)まいで岬を伝えなければ」と苦心していたと いう。
その見どころで驚かせられたのが、なんといって も永瀬演じる男に岬が小屋でレイプされるシー ン。当然、衝撃を隠せないはずが、絵里子がその 場を発見し、事が落着すると、岬は動揺を隠して 彼女の方を気遣いコーヒーを煎(い)れてやるの だ。
当然、陵辱された前後の演技や心情について尚更 考え詰め、緊張もあったのではと推測されるが、 渡辺氏によると「いや、特にそのシーンで永作さ んに何か変化を感じさせるものはなかったです ね。むしろ、自分のやるべき演技がみえていたの ではないでしょうか」とのこと。
あれをさらっと演じ切れたというのなら、それす ら凄みと思えるが…。「岬はずっと生きてきた中 でいろんなことがあったのでしょう。そのたびに 動じず強く生きることを身につけてきた。あの シーンでも、自分より絵里子を気遣い、コーヒー を淹れようとするが手が震える…という繊細な芝 居で永作さんは見事に表現しています」(渡辺 氏)
それを自然にやれてしまうことが今の彼女の奥深 さということか。撮影中、役の難しさを感じさせ ず、周りと接する態度も普段と変わらない永作 に、渡辺氏はあらためてプロフェッショナルな姿 を強く感じたという。
一方、そんな永作と対峙する佐々木希は否が応で も比較されるが、これまた初めて挑戦する役柄で 好演、意外な味わいを見せている。絵里子は遠距 離のキャバクラで働き、子供たちをネグレクトし かねないまま家に残し、やさぐれ苛立つ日常でヒ モのような恋人に依存する生活…。
そんなダメなシングルマザーっぷりも自然で、デ ビュー以前は地元で美少女ヤンキーだった?とい う自身の噂まで思い出され、妙にリアリティを感 じさせるほど(苦笑)。「実際は本人に全くそん なところはなく、素直で演技にも一生懸命」(渡 辺氏)だそうだが…。
母親役で、尚かつこれまでのピュアな役どころと も異なるイメージの打破…意外性にかけたという キャスティング、彼女にとってもチャレンジだっ たという狙いが見事にハマったわけである。
「もちろん永作さんとのやりとりでもいい影響が あったでしょうし、女優としてこれで成長したと いう実感はあると思います。初めて両親や親戚に 観てもらいたいと思う大事な作品になったと佐々 木さんも話していました」(渡辺氏)
まるで水と油のふたりが不幸なきっかけで交わ り、大切な存在となって互いの人生の救いとな る。岬と絵里子のケミストリーと同じように、演 じる女優ふたりの化学反応を味わえる静かな佳作 は、女性目線でのウケもよさそうだ。
livedoor参照
プロ魂

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