「ゴミ清掃芸人」が見た格差社会の強烈な断面
お金持ちと、そうでない人のゴミの特徴とは? 「ゴミ清掃芸人」の滝沢秀一さんが解説します(写真:筆者提供)
奥さんの妊娠をきっかけに、ごみ収集会社の正社員とお笑い芸人の二足のわらじを履くようになった、お笑いコンビ「マシンガンズ」の滝沢秀一さん。今回はゴミ清掃の現場で働いてわかった、「お金持ち」と「そうでない人」の違いを紹介します。
金持ち地域のゴミと、そうでない地域のゴミには違いがある。もちろん100%ではないし、そのような傾向があるということに留めておくが、あながち的外れではないと思う。
「そうでない地域」のゴミの特徴
まずそうでない地域のゴミを中心にお話します。そうでない地域は酒、タバコのゴミが金持ち地域に比べ圧倒的に多い。特に1月4日、正月明け1発目の回収では信じられないほど、発泡酒の缶や一升瓶が出される。正月以外にもこの傾向は強く、まるで親の敵のように飲酒する。もちろん金持ち地域も出るには出るが、ここまで極端ではない。
まるで賽の河原で1缶飲んでは父のため~、2缶飲んでは母のため~と空き缶を重ね合わせて、積み上げたところを鬼に蹴られているのではないだろうかと心配するほどだ。
そしてタバコ。これも圧倒的にそうでない地域のゴミのほうが目立つ。怒りをぶつけるようにゴミ袋に投げ捨てているのでは?と思うのは気のせいか、水で濡れた吸い殻がよくビニール袋に貼り付いている。多く吸っている人は、いちいち小袋に入れるのが面倒なのか、水道でジャーっと水を灰皿に入れてそのまま大きなビニール袋に入れていると考えられる。
そしてよく見るのが、ペットボトルに入っている吸い殻。水を入れて、吸い殻を目いっぱい入れている。金持ち地域ではペットボトルを灰皿代わりに使っている人は見かけない。ちなみに、この時のペットボトルはなぜかコーラが多い気がする。
飲み物で思い出されるのが栄養ドリンクのビン。これも大量に出る。同じ種類の栄養ドリンクが、これを1人で飲んだの?と信じられない量で出されていることがある。当然1人で飲んだとは限らないが、同じマンションで全員が同じ栄養ドリンクを飲んでいるとも思えない。
考え得るのは近くのスーパーなり薬局で栄養ドリンクの大安売りがあって、この辺り一帯の人が同じドリンクを買ったという事態。
しかし、この地域の人が皆、飲まなくてはならない状況だと考えるとそれもそれで怖い。
いずれにせよ、肉体的によほどハードな仕事かブラック企業に勤めている人が多いのかと想像してしまう。
貧すればゴミを大量に出す
大量に出すといえば、そうでない地域のゴミの出し方も特徴があって、一部ではあるが、ゴミを一気に大量に出すのも特徴だ。金持ち地域では大量にゴミを出すことはめったに見られない。
いちばん印象的だったのは、ペットボトル回収時に70リットルの袋パンパンにコーラの詰まった袋が15袋も出されていたことだ。
過度の排出は規定で持っていけないので、清掃事務所に電話をして置いていったが、捨てる時に背負い投げでもしたのではないかというほど、乱雑に置かれていた。なんでペットボトルを背負い投げするんだよと心の中で思いつつも、想像してゾッとした。このゴミが部屋の中にあったということだ。見たところその集積所があったアパートはそんなに広くなさそうだった。
70リットル袋、15袋分のペットボトルが部屋にあったら部屋の中はペットボトルだらけで、ペットボトルの中を軽く泳げるくらいの多さではないか。わざわざペットボトルをペットボトル工場に運ばなくても、ここに各所のペットボトルを運んでペットボトル工場にすればもろもろ手間が省けるのにと思うほどの量だ。のんきに今ならそう思えるが、その時はパニック。清掃員も計算して回収しているので、予定外、予想外の量が出されるとその分清掃車に詰め込めなくなるからだ。
それはさておき、ここでのポイントは同じ人がゴミを一気に大量に出すということだ。そして大量というキーワードの中で特殊ではあるが、こういった例もある。アイドルとの握手券付きCDだ。これらが大量に捨てられているのもそうでない地域の特徴だ。よくそれらのCDが林などに破棄されているというニュースを聞くが、清掃業界でもたまにお目にかかる。
その場合は金持ち地域からではなく、必ずそうでない地域の燃えるゴミor燃えないゴミから排出されることが多い。
買い占めると聞くと、一見、金持ちが金にものをいわせて大量購入するイメージだが、それらが金持ち地域で捨てられているのを僕は一度も見たことがない。
「金持ち地域」のゴミの特徴
一方、金持ち地域でも大量に排出されるゴミは、あるにはある。テニスボールだ。古くなったテニスボールがビニール袋に詰め込まれて捨てられていることがある。この理由は単純明快。近くにテニスコートがあるのだ。マダムたちがこのテニスコートに通っているのだろうと想像できる。
ほかにも大量の枝や落ち葉などが可燃ゴミとして出されるが、これは広い土地を持っていることを意味している。しかしいずれの場合でも、年に数回、もしくはある一定の時期だけである。さらなる金持ち地域のゴミの特徴について話したいとは思うのだが、何せ僕自体が貧乏人だから、よくわからないというのが正直なところ。
というのもタワーマンションに回収に行くと、見たことのないラベルのワインが回収箱に詰まっているのだ。金持ちの中では常識なのかもしれないが、初めて見る品物ばかりなので何とも言えない。
そしてウォーターサーバーの大型特殊ペットボトル。これは最近、そうでない地域からも少しずつ出始めているが、金持ち地域は取り入れるのが早かった。可燃ゴミであれば、回転板で袋が破けてお目にかかるのが美容系のゴミ。どれだけ自分に金を掛けているんだよと感心するほど、パッケージやら入れ物が出てくる。そしてきれいにゴミがまとめられている。
ゴミがきれいにまとめられている理由のひとつは、金持ち地域では集積所回収ではなく、戸別回収が多いからだろうと思う。金持ち地域は大きな家が多く、集積所を作ると家から集積所が遠いなど、不便なこともあるので、戸別回収のところが多い。戸別回収とは自分の家の前に自分の家から出たゴミだけを置き、それを回収することをいう。
作業するほうとしては、面倒くさい一面もあるが、戸別回収の優れているのは、ゴミを出す人に責任感が生まれることだ。ゴミを汚く出せば、当然この家のゴミの出し方は汚ねぇなと思われてしまうので、きれいに出す。
金持ち地域に「パチスロ台」はまずない
戸別回収の地域はやはり分別率が高い。分別しないで、家の前にゴミを置かれたままだとその家の人は困る。
ゴミも特定されるので、シュレッダー率も高い。そして、あまり前もってゴミを出すとカラスが荒らしに来るかもしれないので、8時直前に出すことが多い。そこそこ金持ちのいる地域では、清掃車の音を聞いて門から出てくる。わらわらとマダム主婦たちが集まってきては直接、僕ら清掃員に渡す。
これが良い悪いではなく、僕はこの地域の人たちは皆、専業主婦なんだなと感心した覚えがある。専業主婦ということは、旦那さんの稼ぎがそれなりになければ成り立たない。
金持ち地域では、粗大ゴミも、生活に必ずしも必要のない物が出る。健康グッズだ。少し前はやたらとロデオボーイが出ていた。今は落ち着いて、次にワンダーコアがよく出るようになった。健康グッズにも流行があるんだと、清掃員になるまで思いもつかなかった。ぶら下がり健康器もそうだが、まずこれらの器具を置く場所があるんだなと思う。
ちなみに、そうでない地域の粗大ゴミでたまに出る特徴的な物で言えばパチスロ台。パチスロが好きすぎて、家でもやっているのだろうか、これらが金持ち地域から出ることはまずない。
「あまちゃん『ダサい』と原発できた土壌が一致」
朝日新聞の朝刊1面コラム「天声人語」が
NHKの人気ドラマ
「あまちゃん」
を取り上げた。
その中の一場面で登場した「ダサい」というせりふと、
東京電力福島第1原発が建設されたことには通底するものがあると論じようとしたようなのだが、
「書いてあることの意味が分からない」として、
ちょっとした話題になっている。
マスコミの劣化
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