2015年5月16日土曜日

何故?孫正義はインド人COOを後継指名??

出逢い ~吾輩の読書との出逢い~: 奇面館の殺人



「実質的な後継者指名か、というお話ですけれども、答えはイエスです」

 5月11日に開催されたソフトバンク2015年3月期決算発表。6月の株主総会で代表取締役副社長に就任予定のニケシュ・アローラについて聞かれた孫正義社長は明快に答えた。

 ニケシュは47歳、インド出身。世界最大のインターネット企業であるGoogleでナンバー2として実質的に経営を取り仕切っていた人物とはいえ、ソフトバンクに参加したのは2014年7月。まだ1年も経っていない。

■ 逆算方式で考え抜かれた結果

 孫社長の指名は、一部では驚きをもって迎えられている。しかし、この指名は、孫正義社長の「30年後、時価総額200兆円、世界トップ10の会社になる」という目標を達成するために、逆算方式で考えぬかれた結果である。

 パックス・ロマーナを築き上げたカエサルが、遺書で自らの後継者として18歳のオクタビアヌスを指名したと知ったとき、多くの人が驚きをもって迎えた。自分を後継者と思い込んでいたアントニウスは「なぜ」と言って絶句したと伝えられている。

 オクタビアヌスは、非凡な能力でカエサルの夢(パックス・ロマーナ)を実現し、18歳の少年に指導者の資質を見出したカエサルの眼力を証明した。今年1月に出版した『孫正義の参謀 ソフトバンク社長室長の3000日」(東洋経済新報社・刊)で私は、「ローマ帝国のように世界に拡大していくソフトバンクにも課題がある。孫社長の後継者問題だ」と書いた。ソフトバンクのオクタビアヌスは、ニケシュである、と孫社長は宣言したのだ。
 2010年、後継者育成のためにつくった「ソフトバンク・アカデミア」で、孫社長は後継者の条件をこう規定した。

 「10年で時価総額を5倍にすること」

そのころ、ソフトバンクの時価総額は3兆円だった。5倍の15兆円というと、当時の日本一だったトヨタの約13兆円を越えばならなかった。しかしその後、ソフトバンクの時価総額は約9兆円となり、5倍は45兆円になった。45兆円というと世界第3位のグーグルが44兆円であり、ターゲットはすでに進化した、と私は「孫正義社長の意中の後継者は誰なのか」で書いた。 ニケシュはまさに、グーグルで時価総額44兆円企業の経営を経験してきた人物である。残念ながらこの規模の実質的な経営責任者をつとめた日本人はいない。

 人は「これから頑張るから将来を見て欲しい」という。だが、冷静に考えればその人を評価するのは今までの歩み、これまでの経験を見るほかないのが現実というものである。

 私自身もそうだった。私が携帯通信事業に参入したソフトバンクの社長室長となり、孫社長と共に日本一のNTTと戦えたのは、国会議員として日本全体の情報通信政策に取り組んだ経験があったからだ。それがなければ、孫社長が私を参謀に選ばなかったはずだ。

■ 時価総額を大きくすることへのこだわり

 孫社長は私に「ITバブルのとき、ビル・ゲイツを抜いて世界一になったことがある。3日だけでしたけど(笑)。でも一度なったことがあると、またなれる気がするんですよ」と語ったことがある。時価総額44兆円企業を経営した経験を持つニケシュからすれば、「10年で時価総額45兆円」という大風呂敷の目標も、実現可能な目標として捉えられるはずである。

 ソフトバンクの2015年3月期決算は、売上高が前年より3割増の8兆6702億円だった。注目していただきたいのは13~14年に買収した米携帯大手スプリント、米携帯卸売りブライトスターなどが貢献し、海外売り上げが国内を上回ったことである。

 孫社長は言う。「今までは日本のソフトバンクが海外の会社に投資を行う立場でしたが、これからは第2のソフトバンクとして、世界のソフトバンクが日本に事業展開しているといった立場になりたい」。したがって、”ソフトバンク2.0“は、世界から人材を集めなくてはならない。
「300年続く企業をつくりたい」という孫社長の発言を受け、私はローマ帝国の栄枯盛衰を研究したことがある。そのとき、世界に広がる「普遍帝国」をつくったローマは、人種、国境を越えて、優秀な人材に元老院議員など指導者層への門戸を開く文化を持っていたことを知った。この「寛容」の文化がローマにベスト&ブライテストを集めたのである。

 ニケシュはインド人である。ソフトバンクは35年前、福岡県で始まった企業だ。とすれば、「トップは日本人で」と考えがちである。ところが、後継者候補をインド出身のニケシュにした事実によって、これからソフトバンクは人種の枠を超え、世界からベスト&ブライテストが門を叩くようになるに違いない。

■ 「六韜三略」から見る「プレジデント」を譲る意味

 第1に目標規模の世界企業をマネジメントした経験、第2に世界のベスト&ブライテストを集めるためのシンボルとして、ニケシュの指名は考え抜かれた帰結だろう。そのニケシュに、孫社長はずっと自らのタイトルだったPresident & CEOのうち、Presidentをニケシュに譲る。

 孫社長は言い切った。「上場以来初めて、Presidentのタイトルを譲る。私がCEO & Chairman、彼がCOO & Presidentという立場で、一緒にソフトバンクの第2のステージに挑戦するというかたちになります」。
 
名軍師、太公望の著と言われる「六韜三略」に次の一説がある。「禄を以て人をとれば人尽くすべし。・・国を以て天下をとれば天下つくすべし」。

 禄(報酬)で人をとれば人は一所懸命つくす。だが、国を任せるような地位をもって人を取れば、天下をとることができるというのだ。人間は言葉に縛られる。政治家も「総理」と呼ばれていくうちにだんだん「総理」らしくなっていくといわれる。ニケシュの現時点での評価がどうであろうと、「プレジデント」と呼ばれていくうちに、ソフトバンクの「後継者候補」の求心力は高まっていくにちがいない。

 2006年のボーダフォン日本法人買収による携帯電話参入から九年。孫社長は「自分の頭と時間の90%以上を通信事業に集中してきた」。だが、ソフトバンクという会社は、もともと米ヤフーなどネット分野の「目利き」として世界的評価を受けてきた。

 孫社長がイメージする“ソフトバンク2.0”とは、ソフトバンクが通信のインフラを始める前の、インターネットに集中的な投資を行っていた「インターネットのソフトバンク」に再び戻ることだ。そして、そのときの天下とは、日本でなく、世界である。孫社長は「世界をとる」ために、ニケシュに「プレジデント」を譲り「後継者候補」としたのである。
ヤフーニュース参照
日本を見捨てたの??

忍者AdMax





0 件のコメント:

コメントを投稿