世界中でリモートワークが浸透する中、利用者が急増しているオンライン会議サービス「Zoom」のアカウントが闇市場で売買されていたことが報じられた。米「Bleeping Computer」によると、流通しているのは50万アカウント以上に上り、価格は1アカウント1円未満のケースが多かったという。

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 しかし、アカウントが売買されているのはZoomにとどまらない。元埼玉県警捜査一課デジタル捜査班の佐々木成三氏によれば、“某アイドルの本物のアカウント”というコメントがついたフォロワー1万人超えのアカウントが100万円以上で取引されるなど、日本国内でもインスタグラムやYouTubeなどのアカウントが数百万件も売り出されているという。しかも売りに出しているのは、“売買業者”なのだという。
 そこで『ABEMA Prime』では、かつてアカウントを売買していたという人物にコンタクトを取った。指定された場所に向かうと、そこには想像とは違った意外な人物が待っていた。タクヤさん(16、仮名)、現役の高校生だ。きっかけは1年ほど前、ネットで知り合った業者から「楽に稼げるよ」と勧められたことだった。「いけるかもしれない」と始めると、1日わずか2時間ほどの作業で、すぐに100万円くらいの利益を上げることができたという。

 売買のプロセスを実際のサイトを使って見せてもらうと、タクヤさんは海外のサイトにアクセス。「In Stockと書いてあるのが在庫の数で、今は793個あるということだ。値段は1個当たり0.17ドルなので大体20円ちょいだ。BUYというボタンを押して数を選ぶ。今回は10個買ってみたいと思う。支払方法はいろいろあるがビットコインを使ってみる」と、Twitterのアカウントを仕入れ、売却する作業を流れるように手際よく説明してくれた。
 次に、仕入れたアカウントの価値を上げる作業に移る。「“フォロ爆”というフォロワーを増やすサイトだ」。購入したアカウントを登録し、選ぶだけ。後はBotが自動的に100人分をフォローしてくれるというのだ。「見かけの数にはなるが、お金を出せばフォロワー数もステータスも買うことが可能だ。大体早くてでき上がるまでに2時間くらい」。

 購入の際には「身分確認」はおろかメールアドレスの登録も不要。「人気があると気取りたい方が買う場合もあるし、企業がSNSマーケティングの効果を高めようとして買う場合もある。以前は0.1ドル程度で買えたが、最近では需要が高まっていて、値段も上がっている。売買をしている人の多くは中高生であると思う」と話す。
 転売されたアカウントを使った詐欺被害に遭ったというイズミさん(24、仮名)は月々の生活費が足りず、「ケータイを送ってくれれば1台につき10万円を払う。費用は全てこちらで負担」というツイートに飛びついた。ケータイ4台を購入して相手に送ったが、お金は振り込まれなかった、「(SNSを通じて)このアカウントが同じような詐欺を行っていると連絡を頂いて、やっぱり詐欺だったんだとなった」。

 タクヤさんのようにSNSのアカウントを売買する行為は、サービスの規約違反によりアカウントの凍結になる可能性や、犯罪に使われると知っていた場合には犯罪となり、刑法第62条1項「幇助(ほうじょ)」では正犯を幇助した者は従犯とする正犯の半分の法定刑が定められている。
 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「騙されやすい人のリストを作ったり、お金を騙し取ったりすることに使うようなものは犯罪だが、フォロワーを増やし、さも影響力がある人のように見せたいとか、広告案件を取りたいという話、けしからん話ではあるが、犯罪ではない。それらは切り分けた方がいい」とした上で、「本来、SNSは良い投稿、面白い投稿をするかどうかの方が大事であって、いくらフォロワーの数が多いからといってツイートが多くの人に見られるかというと、そんなことはない。これはネット広告の根幹の問題にも関わってくるが、フォロワー数が多い=広告効果があるという考え方は間違っているし、その構造を変えないと、フォロワー数が多い方がいいんだという傾向は変わらないと思う」と指摘する。

 また、リディラバ代表の安部敏樹氏は「人を紹介されるときに、“この人、YouTubeのチャンネル登録者数が10万人いる”“Twitterのフォロワーが5万人いる”のように紹介されることが増えてきている。やはり、その場ではすごいなと思ってしまうと思うし、そういうところから詐欺が生まれやすい」とした。
 タクヤさんも、自分が売買したアカウントが違法性の疑いのある行為に使われることを後で知ったという。また、知人がトラブルに見舞われたこともあった。「仕入れの時に詐欺に遭ったり、客に晒しあげられたりしたこともあった。語弊があるかもしれないが、やはり買う人間はまともな人ではない。反社の人も多い。絶対にトラブルにならないとは言い切れないし、未成年であれば家族に迷惑をかけてしまうことになるし、自分自身も親に迷惑をかけてしまった経験がある。法律的に問題がないように気を付けてやってきたつもりだが、間接的であれ犯罪に加担してしまっていると考えた時、やはり不安や罪悪感があった。そういうことはやるべきではないと思って引退した」。

 今後についてタクヤさんは「ひきこもりや、学校に行きたくても行けないという中高生は多いが、そのような人は技術を持っていたりするので、何か一緒にビジネスをやれたらいいなと思っている」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)