プラスサイズモデル藤井美穂「チコちゃんでフェミ特集を」
ハリウッドで活躍する藤井美穂さん(26歳)。その存在と発言が注目を集めている。日本で俳優を目指すものの、自分の外見では活躍の場がないと考え、アメリカに渡って6年。163センチ、80キロという身体を活かしてプラスサイズモデルも始め、外見的なコンプレックスを克服した。モデルのほか、俳優、コメディアン、そして最近はインフルエンサーとしての発信にも力を入れている。「美の基準を広げていきたい」と話す藤井さんの言葉は、なぜ日本のフォロワーに刺さるのか。インタビュー【後編】をお届けする。
◆怒るロールモデルになりたい
──俳優、プラスサイズモデル、コメディアンとして活躍する藤井さんは、ご自身の経験をもとに、ツイッターで活発な発言を行っています。
藤井:私は日本に住んでいないし、日本の仕事をメインにしていないので、ある意味、日本での人間関係のしがらみが少ない。なので、日本に関して自由に発言しやすい存在かもしれません。ハリウッドから来た、みたいな肩書きで、注目してもらっている面もありますが、まだ全然たいしたことはないのです(笑)。
それでも、アメリカで仕事をして、このスタートラインに立つことも大変なことだと思うし、私のような外見こそが私の武器になることや、日本にいたときはおかしいと思わなかった女性差別やルッキズム、人権などに関して、進んだ考え方があるロサンゼルスでゼロから学んだことを発信していくのは大事な役割だと感じています。
──アメリカに行くまでは、藤井さんも、あまり声を挙げるほうではなかったとか。
藤井:そうなんです。たとえばセクハラを受けても、このくらいはよくあること、私はぜんぜん怒ってないと気持ちに蓋をしていました。そのほうが、ものわかりのいい賢い人、と言われていましたから。それがアメリカに来たら、周りにフェミニストがたくさんいて。ルッキズム的な発言やセクシスト的な発言にひとつひとつ声を挙げる人たちを見て、怒っていいんだと教えられたし、怒り方も学びました。
日本には今でも、昔の私のように、マインドコントロールにかかっているような状態の人がいます。差別や理不尽な扱いをされても、このくらいで怒ってはいけないとか、傷ついていてもその気持ちに蓋をして、怒るべきことだとも気づけない人たちです。
だからこそ、周囲から怒り方を教えられた私は、酷い言葉や偏った考え方を投げられたときには、ちゃんと怒って、思っていることを伝えないといけない。私が怒ることによって、同じような目にあったことのある人たちが怒りを可視化できる、言い返す言葉を学べる。まず私が、怒るロールモデルになれたらと思っているんです。
◆誰もが声を挙げる自由がある
──最近では、ナインティナインの岡村隆史さんの『岡村隆史のオールナイトニッポン0』(ニッポン放送)の発言について、ツイッターで批判されていました。
藤井:あれは女性差別や職業差別などいろんな問題を含んだ発言で、批判すべきだと思いました。多くの人が声を挙げることで、岡村さんが謝罪し、世の中にこれはいけない表現なんだという問題の可視化ができたのはよかったと思います。私としては、岡村さんに番組を降りてほしいというよりも、岡村さんが出ている番組「チコちゃん」(「チコちゃんに叱られる!」)でフェミニズム特集をやってほしいなと思っていたんです。岡村さんもフェミニズムについて学べるだろうし、すごく注目も集まるでしょうし。
たとえばアメリカでは、「Peloton(ぺロトン)」という室内バイクのコマーシャルが性差別的だと炎上したことがあったんです。そうしたら、俳優のライアン・レイノルズさんがそのCMに出ていた女優さんを、自身がオーナーを務めるジンのCMに起用。その内容が皮肉の入ったアンサーCMのようになっていて話題を呼びました。
そう思っていたら、翌週のラジオに矢部(浩之)さんが登場されて、足らない部分はあれど、部分的にその役割を果たしたような気はします。が、ちゃんとフェミニズムの専門家3人と並んで話ができて、それを世間と一緒に見ることができたら、素晴らしい機会になるのにと思っています。
岡村さんが出演番組を降板すべきと声を挙げるのも自由だと思います。一人の人間の発言や行動に対してさまざまな意見があって、誰もがそれを言う権利がある。それ以上でもそれ以下でもないと思っています。
──藤井さんは、誰かの発言や行動を強く批判しても、人格否定はしない。発言の際、何か気を付けていることやポリシーはありますか?
藤井:怒っていても論理的な議論はできます。あと、できるだけわかりやすく話すことを心がけています。私がしたいのは相手を傷つけることでなく、相手やその周りの人たちに私のメッセージを受け取って欲しいからです。一方で、やはり感情は大切だと思っています。人を動かすのは強い感情であり熱量です。スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんの国連スピーチがあれほど世界を動かしたのは、彼女の強い怒りがあったからではないでしょうか。
◆日本は平等な社会なのか?
──コンプレックスのあった外見について、アメリカに行ったら全く言われなくなったと、前回仰っていました(【前編】参照ください)。日本ではルッキズムや性差別が根強いと感じますか?
藤井:私が暮らすLAは、とりわけポリティカル・コレクトネスに敏感であったり、新しい価値観が浸透している場所だと思うので、アメリカといっても地域によって全然違うと思うんです。ただやはり、アメリカは多様性の国ですから、日本に比べて、都市部では人々の意識に大きな違いを感じます。
たとえばアメリカには「ホワイト・プリヴィレッジ(White privilege)」という言葉があります。かなり複雑な言葉で説明が難しいのですが、白人は生まれながらに優遇されているといった意味の言葉です。白人でかつ異性愛者に生まれたら、生まれながらにして社会的に力のあるグループに属し、そのおかげであらゆることで優遇され、一方でその影には、それらの優遇を受けることのないマイノリティがいます。それにも気づくことがないと、マイノリティを傷つける意のない差別をしてしまうことにもつながります。
アメリカではマジョリティもマイノリティも、自分の立ち位置を常に自覚して発言することを求められますね。別に人に上下をつけるような意味ではなく、歴史的にその性別や民族の人たちが受けてきた差別はなくならないし、その歴史は現代の問題と地続きの問題であると考えたときに、自分の立場を理解しないといけないということです。
対して日本は、皆平等という意識が強いように感じますね。でも平等という言葉自体が曖昧なもので、私は使うことに躊躇してしまいます。日本は日本人が思っているよりも平等な社会ではないんじゃないかと感じさせることが多くあります。しかし、それが当たり前になっていて、なかなか抜け出せない。
実際には女性差別や人種差別、様々な差別があるのに、自覚的でない人が少なくないような印象を受けます。マジョリティも、自分がその強者グループに生まれながら属していることにより受けている「当たり前の恩恵」を受けられないマイノリティや弱者のグループがいるということにも気づかない。だから性差別がなかなか認識されないのかなと。
でも、先日、なぜかふと思ったんですが、20年くらい前に、「パイレーツ」っていうコンビがいましたよね。彼女たちの「だっちゅ~の」っていう胸の谷間を見せるネタ、あれ、いまだったウケたかな? って。そう考えると、色んな側面で、日本の社会も変わってきている。だから、現状がどうであれ、自分ができることをやっていくしかないと思っています。頼んでねーよって思う人もいるでしょうけど(笑)、関係なく私はやっていきます。
──今後、日本で仕事をされる予定は?
藤井:私は何でもやりたい人間なので、機会があればぜひやりたいですね。今は新型コロナウイルスの感染拡大で休業状態ですが、俳優、モデル、コメディアンももっともっとやっていきたい。中でも面白くあることは人生のテーマなので、インプロ(即興コメディ)の学校に通って勉強も続けています。アメリカ人は笑いが大好きだから、面白くないと誰も聞いてくれないし、感動してくれない。時に真面目な発言もしますが、面白さを忘れずに、これからも発言していきたいと思っています。
◆プロフィール/ふじい・みほ 三重県出身。アメリカLAで俳優、コメディアン、プラスサイズモデルとして活躍の傍ら、インフルエンサーの活動も行っている。インスタのフォロワー7万人(@mihoimi)、ツイッターのフォロワーは2万人(@mihoimiofficial)
モー娘。& AKB48“育ての親”が語るアイ ドルの資質〜なぜ前田敦子を選んだの か?
モーニング娘やAKB48の振り付けを担当し、“怖 い夏先生”としてもお馴染みの夏まゆみ氏が、初の ビジネス書『エースと呼ばれる人は何をしている のか』を出版。ORICON STYLEではインタビュー を敢行。芸能界で大成するためのアイドルとして の資質について独自の視点で語ってくれた。
【特集】夏まゆみ、モー娘。振付時にレズ疑惑が!!
■いかに“良いプライド”を保てるか?
——これまでに、数多くの著名人と接してきた夏先 生ですが、大成する人の資質という部分での共通 項について今作では明確に提示されていますね? 【夏】はい。本にも書かせて頂いたんですけど、 簡単に言うと、自分を持っていること、ブレない こと、常に学ぶ姿勢があること、そして一番大事 なのは“良いプライド”を持っていることだと思い ます。
——ただ、プライドを持つことと、学ぶ姿勢という ことは必ずしも比例していくとは限りませんよ ね? プライドが邪魔をして学ぶ姿勢を疎かにして しまうこともあると思うんです。 【夏】プライドには“良いプライド”と“悪いプライ ド”があって、学ぶ姿勢を疎かにしてしまうのは、 悪いプライドが邪魔をするから。それは芸歴や地 位ということにも置き換えられます。でも、大成 して尚且つ長年に渡って芸能界の第一線で活躍し ている人は、瞬時に“裸の自分”をさらけ出せるん です。良いプライドというのは、裸になれた上 に、自分が何を求められているかを理解してい て、それに必ず応えてやるという信念だと思うん です。
——本にも書かれていましたが、郷ひろみさんや志 村けんさんの仕事に対する姿勢には感銘を受けた ようですね? 【夏】はい。もうこちらがビックリするほど素直 で、もしかしたらモーニング娘。やAKBよりも素 直に聞き入れてくれるんじゃないかなって (笑)。
——そこまで(笑)。 【夏】例えばリハを繰り返したりすると、安倍 (なつみ)なんかは「まだやるんですか」とか 言ってくるのに対して(笑)、郷さんは嫌な顔ひ とつせず「はい!」って。とても良いプライドを 持っていらっしゃるんです。
——それは、貪欲に新しいモノを吸収しようという 欲求の表れですよね。何時でも教えをこう立場に なれるという。 【夏】そういう気持ちって凄く素敵だなぁって思 うんですよね。芸能界という厳しい世界で長くご 活躍されている方は共通してその姿勢をお持ちで すね。
■前田敦子を見て「この子はきっと芸能界で生きて いける!」って
——夏先生はAKB48の立ち上げから参加され、1期 オーディションの審査員を担当していましたし、 前田敦子さんを強く推したのも夏先生でした。 審 査の際、「この子は芸能界で生きていける」とい う資質をどのように見分けるんですか? 特にAKB は“会いに行けるアイドル”というコンセプトで身 近な存在としての価値観を見出しているだけに、 余計に難しいと思うんですけど…。 【夏】“会いに行けるアイドル”というコンセプト は、結成当初から掲げていたワケではなく、後に 秋元(康)さんがフレーズとして使い始めまし た。当初、秋元さんが私に言ってたのは「これか らのアイドルはテレビからじゃなくて、ファンが 直接的に育てていくんだよ。一緒にやらな い?」って。私は「はぁ…」としか返せなかった んですけど(笑)。
——でも、常設劇場の設置、握手券、選抜総選挙な ど、確かにファンがこれまで以上に直接的に関わ れるグループですよね。 【夏】そうですね。で、私もお引き受けしたんで すけど、私が見ていたのはダンスのスキルではな くて、オーディションに合格したいという明確な 目的を持ってきた子、もっと言えば、“生きる目的 を持った子”です。その目的を掴むためにどのよう な行動を取るのかを見ていたんです。だから、本 当に踊れない子ばかり選んでましたね。
——そうだったんですか(笑)。 【夏】踊りという点でも、ゼロからの子、裸の子 をあえて選んだんです。踊りは練習すれば誰でも 上手くなるので。
——ということは、やはり個々の気概というか、懸 ける思いになりますよね。前田敦子さんにはそれ が携わっていたんですね。ただ、口で「頑張りま す!!」っていうのは正直誰でも言えるワケで……。 【夏】「絶対合格したいです!!」って声高に主張し ている子に限ってすぐ辞めますね(笑)。ダンス の審査では、最初に16小節くらいの振りを踊って くださいと指示します。で、練習時間を経て審査 員の前で本番という流れなんです。実は、私は本 番でのダンスの出来は全く見ていなくて、本番ま での“過程”を重視しています。
——本番までの過程を、如何に有効に、かつ集中し て取り組んでいるか?ということですか。 【夏】その通りです。全くやる気のない練習をし ている子もいれば、周りの子たちの出来ばかり気 にしている子もいる。そんな中で前田は、貪欲に 振りを覚えてやろうという鬼気迫る雰囲気で練習 に臨んでいて、周りの子たちの出来なんか全く気 にするそぶりを見せず自分のことだけに没頭して いたんです。その集中力をみて、「この子はきっ と芸能界で生きていける」って思ったんです。
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