「50分500円」コロナ禍の風俗店が出血大サービスに走るワケ
政府の休業要請による経済的ダメージが特に大きいのが、水商売と風俗業界だ。ナイトビジネスに詳しいライターの富士弥勒氏は、「水商売も風俗も、それぞれ工夫をこらして客をつなぎ留めようとしている。だが、その結果には明暗が分かれている」という--。
■オンライン接客は30分1500~5000円が相場
政府の緊急事態宣言による「営業自粛」のダメージで、多くの事業者は瀕死の状態に陥っている。とりわけ壊滅的なのが、水商売と風俗業界だ。ただ、当事者たちもただ手をこまねいていたわけではない。さまざまな新サービスを打ち出し、過酷な状況に順応しようと必死にもがいている。
まずは水商売から見ていこう。客足の減少が止まらぬ中、わりと早い段階で登場したのが“オンライン接客”だ。
LINE、Skype、Zoomなどのビデオ通話アプリを利用し、スマホやパソコンの画面越しに客と対面するというもので、料金は30分あたり1500~5000円が相場。支払いはLINE Payなどのスマホ決済やクレジットカードなどで行う。仕組みの関係上、原則として前払いだ。
客が飲む酒は自前で用意する。店によってはキャストにドリンクをおごるシステムがあることもある。
■すでに15以上のプラットフォーム業者がひしめいている
現状、オンライン接客の形態は3パターンだ。
①システムを提供するプラットフォーム業者(以下、PF業者)に各店舗が店ごと加盟
②PF業者がキャバ嬢や素人女性を個別に採用
③店舗が独自に開発したシステムで運営
②PF業者がキャバ嬢や素人女性を個別に採用
③店舗が独自に開発したシステムで運営
筆者が調べた限り、①に該当するのは「スマキャバ」だけだが、②には「おんきゃばJAPAN」「ポケパラオンライン」「ズムキャバ!」など実に15以上のPF業者がひしめいている。こちらが主流といっていいだろう。
このことから、オンライン接客は、キャバクラ店のコロナ打開策というよりは、キャバ嬢個人とPF業者のための新ビジネスとも見て取れる。
なおキャバクラだけでなく、ガールズバーもオンライン接客に乗り出している。具体的には、六本木の「RUTILE(ルチル)」、神楽坂の「N(エヌ)」など東京勢が多いが、地方でも仙台や札幌などでわずかに確認できる。
これらは③のパターンで、オンライン接客用のシステムを独自に開発し、運営している。それには相当の投資が必要だ。言い換えれば、ガールズバーの経営者たちが抱いた危機感もそれほどに大きかったのだろう。
■39歳男性「私服のキャバ嬢に違和感しかない」
では、オンライン接客の需要はどれほどあるのか。ヒントになりそうな数字は、ポケパラのHPで確認できる。
同サイトが運営するポケパラオンラインは4月27日からスタートしたのだが、そこから5月12日までに関東でオンライン接客が行われたのは「132回」と表示されている。平均して1日約10回のペースだ。ちなみに東海は「82回」、関西で「62回」、九州に至っては「8回」。とても盛況とは言いにくい数字だ。
オンライン接客を体験した男性(39歳)が見つかったので、率直なところを語ってもらった。
「僕に付いた嬢は自宅からZoomで接客してくれたんですけど、正直、微妙でしたね。キャバクラの楽しみって、嬢と会話するだけじゃないんです。キメた髪型だったり、華やかなドレス姿だったり、店の豪華な内装だったり、そういう要素をひっくるめて楽しむものなんです。だから自宅で普通の私服を着てる嬢と話しても違和感しかなくて。あとネットの通信状態が調子悪くて会話が途切れることが何回かあったんですけど、そういうのもストレスでしたね。二度目? いや、ないですね」
さらに男性からは、こんな指摘も。
「僕は独身だからいいけど、オンライン接客って既婚者にはハードル高そうですね。奥さんのいる自宅で嬢とトークなんかしてられませんよ」
キャバクラ客のメイン層は30~40代、つまり既婚世代と言われている。そこをごっそり取りこぼしているのであれば、無意味なのではないだろうか。
■「50分500円」コロナ禍でヘルスが出血大サービス
次は風俗業界だ。コロナ不況の対抗策として、各店がこぞって打って出たのは料金の値下げだ。
通常料金から5000円を割り引くなんてのはザラ。コロナの感染拡大が猛威をふるい始めた3月あたりには、プレイ代の半額キャンペーンを掲げる店までチラホラあったほどだ。
極め付きは名古屋の店舗型ヘルス「べっぴんコレクション」だろう。この店はなんと、普段は50分1万3000円するプレイ代を、ワンコイン、つまり500円に下げたのだ。なお、現在は営業自粛中となっている。経営が赤字になるのはもちろんだが、コロナで離れた客足を何が何でも取り戻したいという強い思いがなければまずできない決断だ。
値下げとは別のベクトルで集客を試みる店もある。語ってくれるのは、歌舞伎町ガイド人として定期的に「歌舞伎町ツアー」を開催する仙頭正教氏だ。
「歌舞伎町に老舗のハコ型(店舗型)ヘルス『プチドール』っていうのがあるんですけど、そこが10分1500円でオナクラみたいなサービスを始めたんです」
オナクラとは客と女性が互いの自慰行為を見せ合う店を指す。
「要は、普通のヘルスプレイは濃厚接触が怖いけど、見せ合いならまだ安心でしょってことです。私も試しに遊んできたんですけど、思ったより客が入っててビックリしました。なかなかいいアイデアですよね」
■休業要請に応じられない業界特有の理由
自らの企画力で危機を乗り越えようとする姿勢は立派だが、一方で見過ごせない現象もある。
緊急事態宣言が全国で解除される5月末まで、水商売や風俗店は休業要請の対象だ。しかしこうした要請を無視している店も多い。先ほどのプチドールもしかりだ。なぜか。
その背景には、営業しなければ店がつぶれるという経済的な理由のほかにもうひとつ、風俗業界特有の事情があるらしい。
「風俗経営で難しいのは、常に女の子の数を一定数保っておくことなんですけど、店が休業すると、彼女たちはドンドン辞めていきます。経営者たちはそこを恐れているんです」(仙頭氏)
その事情はキャバクラも同じだ。店の看板の電気を消し、休業を装ってはいるものの、実はちゃっかり接客を行ってる店は少なくない。そういった店ではキャストが営業メールを送り、なじみ客を呼びつけているのだ。
■ふるわないキャバクラと盛り返しを見せる風俗
ただ、そのやり方にも限界はあると仙頭氏は言う。
「知り合いのキャバ嬢が言ってたんですけど、営業メールを送ってもほとんど無視されてるそうです。やっぱりこの時期はよほど熱心な客じゃない限り、来たがりませんよ。水商売は厳しいです。たぶん廃業する店が続出しますよ」
しかし、風俗業界への見立ては違うようだ。
「あくまで歌舞伎町の話なんですけど、GWが明けたころから、どうもデリヘルを中心に客足が戻りつつあるみたいで。特に激安系の店が盛り返していると複数のキャッチ(客引き)から聞きました」
明暗が分かれつつある水商売と風俗業界。いったい、この差は何を意味するのだろう。
キャバクラ嬢との飲酒はまだ我慢もきくが、人間の本能=性欲を抑えることは不可能。まさか、そういうわけでもあるまいが。
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富士 弥勒(ふじ・みろく)
ライター
1975年生まれ。月刊誌の編集のかたわら、執筆活動にも従事。
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富士 弥勒(ふじ・みろく)
ライター
1975年生まれ。月刊誌の編集のかたわら、執筆活動にも従事。
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(ライター 富士 弥勒)
風俗店やめたのに、HPに残り続ける顔写真 契約を盾にする店に対抗するには?
「店を辞めたのに、風俗店のホームページに掲載された顔写真を削除してもらえません」。弁護士ドットコムに、このような相談が寄せられている。
相談者は、面接の際に「入店後の写真は店側に任せる」という旨の契約書にサインをしたという。しかし、体験入店したところ、店と合わなかったため、本入店はしないことに。写真の削除を求めると、店側は契約書があることを理由に応じてくれないという。
店のホームページから写真を削除してもらえずに困っている女性は、相談者だけではないようだ。
歌舞伎町のキャバクラで働いて5年になるというレイカさん(20代)は「まわりで風俗をしている子からよく聞く話」と話す。女性が辞めたり、少なかったりする場合は印象が悪くなるため、店側も削除したがらないようだ。
退店した女性の写真を掲載し続けることは「肖像権の侵害」にあたらないのだろうか。店側に写真を削除してもらうには、どうすればよいのだろうか。松田有加弁護士に聞いた。
●特段の定めがないかぎり「肖像権の侵害」にあたりうる
ーー女性が退職後も店が写真を掲載し続けた場合、「肖像権侵害」にあたる可能性はあるのだろうか
「店側との契約書の内容次第になるでしょう。
契約書中に『特段の定め』(たとえば、女性の退職後も店側が女性の肖像を利用し続けることができるという定め等)がない限り、店側による写真の利用は女性の『肖像権侵害』になりえます。
そのため、女性側が店に削除を請求すれば、店はそれに応じなければなりません。
なお、店が直接運営しているウェブページだけではなく、店が集客のために情報の掲載を依頼していると思われる別のウェブページ(風俗情報サイトなど)にも写真が残っていることがあるため、注意が必要です」
●そもそも、契約書が作成されない場合も…
ーー店側に削除を依頼しても応じてもらえない場合、どのように対応すべきだろうか
「風俗業界においては、そもそも契約書が作成されない場合が散見されます。
女性側も、家族などに風俗店で勤務していることを知られないようにするため、受け取った契約書を破棄したり、持ち帰らなかったりすることがあります。
このような場合、契約の内容を把握することが困難となり、店側に対する削除の要求が認められるかどうかが定かではなくなってしまうこともあります。
ただし、女性側の生活状況が変化するなどして、風俗店での勤務歴を知られたくないという状況になることも少なくないでしょう。店側には、その点についての十分な配慮を持った対応が求められると思います。
もし、削除を依頼しても相手にされないという場合には、弁護士に相談してみるといいでしょう」
【取材協力弁護士】
松田 有加(まつだ・ゆか)弁護士
子どもの権利擁護に強い関心があり、弁護士になる前、児童養護支援施設や法教育の授業に関わる活動を行う。特に芸能界で頑張る子どもや女性の助けになりたいという強い思いを持ち、何でも相談しやすい弁護士であることをモットーに、誠実に職務に取り組む。知的財産権、インターネット上の法的問題等を扱う。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:http://rei-law.com/
松田 有加(まつだ・ゆか)弁護士
子どもの権利擁護に強い関心があり、弁護士になる前、児童養護支援施設や法教育の授業に関わる活動を行う。特に芸能界で頑張る子どもや女性の助けになりたいという強い思いを持ち、何でも相談しやすい弁護士であることをモットーに、誠実に職務に取り組む。知的財産権、インターネット上の法的問題等を扱う。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:http://rei-law.com/
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